無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
ついに新曲CDの発売日になったけれど、唯一の朝陽と一緒の講義は休講になったので今日は一度も会っていない。
そもそも大学に来ているのかもわからず、一緒に買いにいく約束はどうしたものかと悩んでいた。

「あ、今野くん」

廊下の曲がり角でバッタリ会った人物に思わず声をかけると、亮太は一瞬目を丸くした。

「ああ、ビックリした、岩沢さんか」

「今日って秋村君来てるのかな?
一緒にCD買いにいく約束してたんだけど」

「朝陽?
ああ、奥本教授の講義休講だから会わないのか」

ちょっと待ってて。と言って亮太は携帯を操作するとすぐに返事が来たようで、噴水の前で待っててくれって言ってる。と教えてくれた。

「わかった、ありがとう」

「どういたしまして」

それだけ話すと真未は噴水の場所に向かって歩き出す。
その背中を亮太がじっと見つめ、意外と話しやすいんだな。と呟いていたのだが、その言葉を知る由もなかった。
< 24 / 189 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop