無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
「いやー、腕を掴まれたときに助けに入ろうとしたらその前に撃退してて、出てくるタイミング逃した」

苦笑いしながらやって来る朝陽の言葉に嘘はないのだろうが、思わず疑わしげな目を向けてしまった。

「だからって、わざわざしゃがんで隠れることはないと思うけど」

「岩沢さんがあまりにも格好よくて……覗き見してました」

「覗き見って……趣味悪いわよ?」

「ま、元からいいとは言わないけど。
でもすごいね、全然芯がぶれなくて強くて……思わず惚れそうになったよ」

笑顔でそんな言葉を言う朝陽に思わず溜め息をつくと信じてないと思ったのか朝陽が、本当だって!と弁明しようとしたところを左手を上げて制する。

「はいはい、お気持ちだけ受け取っておくわ」

「あ、信じてない。
本気なのになー」

「さあ、早く買いに行こうかしら」

「うわ、スルー!?」

足早に歩き出した真未の後ろを朝陽が慌ててついてくる気配を感じながら、真未はショルダーバッグのストラップをギュッと両手で握りこんだ。

惚れそうだなんてやめてほしい。
冗談でもそんなことを言われたら、期待してしまいそうになる。
自分には溺愛している彼女がいるくせに……。

チクッと微かに痛んだ胸に気づかないふりをして、真未は前だけを見つめると歩みを止めることなく進んでいった。
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