無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
「秋村君じゃなくて、朝陽。
昨日名前で呼び合うって決めたじゃん」

「それは秋村君が勝手に……」

「じゃ、これいらない?」

とカフェオレボウルを引っ込めようとするその腕を咄嗟に掴んだ。
んー?とニヤニヤして笑う朝陽を睨み付けながらも視線はカフェオレボウルに向かってしまう。

「朝陽!これでいんでしょう!?」

「ん、よくできました」

言いながらカフェオレボウルを差し出し空いていた片手で頭をポンポンと撫でられる。
その一連の動作に二人に注目していた人達は目を見開いたり、キャー!と小声で声を上げたりしていた。

「あ、それとこれベーグルサンド。
結構腹にたまるけど美味しいよ」

そう言って見慣れた紙袋を渡され手を振り去っていく。
一気に友達に囲まれて何か話している朝陽に真未は呆気にとられながら、先程触られた頭に軽く触れた。

「なるほど、秋村君は肉食系だったのね。
ねえ、真未……真未?」

「あ、な、何?」

杏子の何度目かの呼び掛けに慌てて返事をすると、何故か杏子は目を細めて柔らかく微笑んだ。

「そっかそっか、これは秋村君に頑張ってもらわないとね」

「な、何の話よ」

「別にこっちの話ー」

鼻歌でも歌いだしそうなほど機嫌の良さそうな杏子に首を傾げて、真未は貰ったばかりのカフェオレボウルを大切に紙袋に直した。
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