無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
「朝陽、お前マジで岩沢さんと付き合い始めたんだな」

「お似合いだけどちょっとショックー。
秋村君の彼女に立候補したかったのにー」

「俺も岩沢さん狙ってたんだけどなー」

「だから、お前相手だと岩沢さんが相手にしないって」

好き勝手に話している友人達を放って椅子に座ろうとすると後ろの席の方にいた亮太にちょいちょいと指だけで呼ばれた。
荷物を持って呼ばれるままに近づくと、亮太は開口一番に珍しいな。と言ってきた。

「何が?」

「サイン入りグッズ。
お前、そうやって身内を使って何かするの嫌ってたじゃん」

「ああ、あれは本当に渡してくれって頼まれてたんだよ。
自分が使うより喜んでくれる人が使ってくれた方がいいからって」

「それを利用するのも珍しいよな。
それに、知り合いに見られそうな場所で二人で食べ歩きだろ?わざと見られて周りに広めるように仕向けたとしか思えないんだけど、それだけ本気だってことか?」

その言葉に朝陽は何も言わず勝ち気な笑みを浮かべてから亮太と一緒に真未を見た。
朝陽に触られた頭に触れて、仄かに顔を赤らめている。
本人は気づいていないのか、杏子に何か言われてきょとんとしているような様子も伺える。

「あんな風に自分の表情の変化に全く気づいてないみたいなんだよね。
そこがまた可愛いと思わないか?」

「そこで俺が“そうだな”って同意したら睨んでくるんだろ?」

お前、自分が本当に大事だと思うものに共感されるの嫌うじゃん。と言われ朝陽は浮かべていた笑みを深めた。
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