無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
「朝陽?」

あの目だ。
高三の時に彼女を護るために見せていたあの目。
ゾクッとすると同時にドキッと高鳴った心臓に戸惑っていると、朝陽はその瞳のまま先輩を睨み付けた。

「俺さ、大事なものに手出されるのだけは我慢できないんどけど」

「ち、違……その子が先に……」

「真未が先に何したの。
無闇に喧嘩吹っ掛けたり突っかかったりする子じゃないんだけど」

「っ……でも……!」

「ねえ、先輩。
俺さ……」

女相手でも容赦しないよ?

その言葉に先輩は顔を青ざめさせ、教室にいた人達も言葉なくただ黙って成り行きを見守っていた。
端正な顔の人の無表情ほど怖いものはない。

「あーあ、やる気なくなった。
真未、後の講義サボろう」

「え!?いや、私は……」

いいからって言いながら朝陽は真未の腕を掴んだまま教室を出ていく。
無論、掴まれたままの真未は朝陽に引っ張られる形でその場を後にしたのだけれど、この一連の騒動にまだ頭がついていけていなかった。
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