無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
「すみません、注文いいですか?」

「あ、はい!今行きます!」

注文表を手にやってきたバイトの子は最近パンを買うときにレジで打ってくれる子で、何故かチラチラと陽菜を気にした様子で注文を聞いてその場を去っていった。

「ねえ、あの子陽菜のこと気にしてたみたいだけど、正体ばれたりしてない?」

「え?うん、大丈夫だと思う……。
でも、昨日ここのコックさんに勇人さんと一緒にバレそうになっちゃって」

「勇人兄さんもいて何やってんのさ……てゆーか、パン屋ならコックじゃなくてブーランジェね。
で、そいつ男?」

「ううん、女の人で大学生みたい。
さっき私と勇人さんのこと誰かに似てるってこと内緒にしてほしいってお願いしたら、もちろんって言ってくれて……パンのオススメも教えてくれるし、すごく親切ないい人なの」

「陽菜は人を疑うこと知らないから……口だけなら何とでも言えるし、親切にパンを薦めるのも店員なら当然……」

「真未さんっ!!」

突然、店の奥からさっきのバイトの子の声が店内に響き渡った。
数少ない客も声が聞こえた方に視線を向けていると、真未さんっ!早く冷やしてっ!!と言う声が再び聞こえてきた。
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