無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
診察を受けて処置をしてもらうと真未の手は湿布や包帯でグルグル巻かれて、待合室で待っていた朝陽のいるところに戻った。

「大丈夫だった?」

「うん、数日で治るって」

「よかったな、あんまり酷くなくて」

笑顔で言いながら立ち上がった朝陽はいつの間にか会計を終わらせていたらしく、傍らに置いてあった真未の荷物を再び手に取ると歩き出した。

「荷物持ってくれてありがとう。
ここまでで大丈夫だから」

病院を出たところでそう言って手を出すと、朝陽は眉を潜めた。

「何言ってんの、怪我人に荷物持たせるわけにいかないし、帰り道もどうせ一緒の方向なんだから」

「私、今一人暮らしでこの近くに住んでるのよ。
朝陽は実家住まいで駅に向かうんでしょ?逆方向になるから」

そう言うと朝陽は目を見開いて、一人暮らし?と言った。

「まだその手痛むんだろ?数日でも実家に帰ったら?」

「そんなわけにもいかないのよね。
一人暮らしするときに父親と揉めちゃって、まだ喧嘩中」

「友達……例えば小峯さんの家に厄介になるとか」

「杏子?あの子は柏木君と同棲してるから」

上がり込みにくいじゃない?と言うと朝陽は黙りこんだ。
確かに今はまだ痛みもあって使いにくいけど、すぐに治るはずだしなんとかなるだろうと真未はもう一度荷物を貰おうと手を差し出す。
その包帯で覆われた手を見て朝陽は何かしら決意したように頷いた。
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