無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
「わかった、じゃあちょっと邪魔させてもらうよ」

「え?どこに?」

「真未の家、早く案内して」

いやいやいや、ちょっと待って。先を歩き出す朝陽の背中を見つめて真未はその場に固まったように立ち止まる。
昨日勝手にキスしてきて、さらには知らなかったとはいえバイト先に女性と二人きりで仲良くお店にいるような男を簡単に家にあげれるはずがない。

「真未、ほら早く……」

「……しない」

立ち止まり後ろを振り返って真未を促すが、歩こうとせず否定の言葉を小さく呟いた真未に朝陽は眉を潜めていた。

「真未?」

「案内なんてしない、朝陽を家になんて絶対あげない」

睨み付けるようにそう言い放つと、機嫌を悪くするどころか朝陽はニッと口角を上げて笑った。

なんでこんなこと言われて笑ってるの?とその表情を不信に思っていると、朝陽は徐にスマホを取り出して何やら操作し始めた。
暫くすると朝陽のスマホが鳴り出して画面を見ると、ニヤッと笑っていた。

……だから、なんで笑ってるの……。とその笑顔に思わず後退りしそうになるとパッと顔を上げた朝陽はにっこり笑って、行くよ。と言って歩き出した。

「い、行くってどこに?」

「決まってるじゃん、真未の家」

「場所も知らないのにどうやって行くのよ。
絶対教えないわよ?」

「別にいいよ」

そう言って勝ち気に笑う朝陽に嫌な予感がしながら後ろをついていくと、その嫌な予感は的中してしまうこととなった。
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