無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
「鍵は鞄の中?その手で出せる?」

「大丈夫、鞄貸して」

「了解」

鼻歌でも歌い出しそうな機嫌の良さで朝陽は鞄を真未に返した。
案内などしていないのに迷うことなく、本当に真っ直ぐに真未が住むアパートにやって来た朝陽は表札など見なくても部屋のドアまで聞くことなく当ててみせた。

「じゃ、ちょっとだけお邪魔しまーす」

「上がっていいなんてひとごとも言ってないんだけど……。
て言うか、私は今物凄くあんたが怖いわ」

ストーカーとかしてないわよね?と家に入ることなく目を細めて怪しいと訴えていると朝陽は肩を竦めて、まさか。と答えた。

「そこまで暇じゃないし、あえて言うなら……俺の情報網を甘く見るなってことかな?」

そう言って見せた朝陽の笑みがどす黒く見えたのは決して気のせいなんかではないと、真未は顔を引きつらせて乾いた笑みを浮かべた。
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