無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
朝陽の話しはこうだった。

姉は美人だけど天然の鈍感で人見知りと赤面症が激しい動きが小動物のような人で、同級生や通りすがりの人に頻繁に声をかけられていた。
所謂ナンパなのだが、それに全く気づかずおどおどしている姉は本当に危なっかしかった。

そこで朝陽がとっていた行動が、姉の彼氏のふりだった。

年上だろうと寄ってくる男は構わず睨み付け、時に脅し、時には力ずくで。
そうしているうちにすぐに周りからは彼女がいると誤解されたらしいが特に誤解を解く必要がなかったこともあり、頼りない姉を護るためならそれも利用しようと否定することも、かと言って肯定することもなく過ごしていた。
亮太のように仲のいい友人達は事情を知っていたからか敢えて“朝陽には溺愛している年上の彼女がいる”と真未も知っている噂を広めていたらしい。

けれど、今ではもうその必要がなくなったし、彼女にしたい人も出来たから“誰とも付き合ってない”と宣言したらしいのだが……。

「じゃあ、陽菜さんは元カノじゃなくてお姉さん?」

「そう。
そして、昨日一緒にいた人は旦那さん」

「……失礼だけど、あんまり似てないよね?」

「ま、いろいろ事情があって姉が変装してるから」

「変装……」

それなら似てなくてもおかしくないと真未は妙に納得してしまった。
あの時見た彼女を護っていると思っていた朝陽は姉を護っていたのかと力が抜けてしまい横にあるベッドに体を預けた。
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