無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
またやってしまった……。

座席に座り肩を落としていると隣の席に朝陽が座った気配を感じて顔を上げることなく、ごめん……。と呟いた。

「何が?」

「奢ってもらってお礼も言ってなかったし、さっきも周りの人が見てたからって朝陽の手を振りほどいたりして……」

前からそうだったけど、朝陽と付き合い出してからは特にそんな言動が無意識に多くなっていて自己嫌悪に陥りつつあった。
こんなツンツンしてばかりだとすぐに朝陽が離れてしまうのではないかと思っていると、朝陽は膝の上で握られていた真未の手を上から握った。

「別に気にしてないし、真未が恥ずかしがってやったこともわかってるから」

「でも、ツンツンしてばっかりで嫌にならない?」

「……もしかして、気付いてない?」

意外だと言わんばかりの表情で見てくる朝陽になんのことかと首を傾げると、あー、そっか、真未は自分の気持ちとかに鈍感だったな。と呟かれた。

「何、何の話?」

「いや、こっちの話だけど……そうだな、一つ言えることは、真未は単なるツンツン女子じゃないってことかな」

「え?それってどういう……」

「しー、もう映画始まるから、そっちに集中しよう」

人差し指を口に当てるその仕草にドキッとしながらも、真未は前を向いてスクリーンを見た。
王道と言われているラブストーリーの話に出てくる主人公達を自分達に置き換えてみては一人、ドキドキしたり切なくなったり恥ずかしくなったりと忙しかった。
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