無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
映画を夢中になって見ている真未の横顔をチラッと見て朝陽はふっと微笑んだ。
こうやって表情が微かに変わっているのも、手を振りほどいたときに恥ずかしさのあまり頬が仄かに赤くなっていたのも気づいていないのだから堪らない。
挙げ句の果てに、ツンツンしてばっかりで嫌にならない?と聞かれたときには驚いてしまった。

まさか気付いてないとは思わなかった。

確かに真未は外や誰かが周りにいるときはツンツンした態度をとっているが、二人きりになったときは多少なりとも言動が柔らかくなり表情も目に見えてわかりやすくなる典型的なツンデレ女子だったのだけど、そうか気づいてなかったのか。と朝陽は一人頷いた。

映画が終わると真未は頬を紅潮させて、いい話だったね!と笑顔で言ってくるので朝陽は優しく微笑んで手を繋いでた。

「あんなふうな恋愛してみたくなった?」

「ううん、それはいいかな……。
だって、途中で二人が離れ離れになってたじゃない?そんなの私嫌だもの」

「それって……」

俺と離れたくないってこと?と耳元で囁くと真未は一気に赤くなった。
いちいち反応する真未に対する想いはどんどん膨れていって、いつか我慢できなくなるかもしれないと朝陽は苦笑するのだった。
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