無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
「あの、岩沢さん……さっきはすみませんでした!」

カルツォーネとコーヒーのセットを運んできた新人の子がおずおずと顔を出して頭を下げてきた。
成形していた手を止めて、何が?と首を傾げると、すぐに聞きに来たり、パンの種類を覚えられなくて……。と指を忙しなく動かして緊張しているのを誤魔化しているようだった。

「気にしないで?分からないことをすぐに聞きに来るのは良いことなの、その分失敗しないんだから。
パンの種類もたくさんあるんだからすぐに覚えられなくて当然だわ。
私だって最初は覚えられなかったんだもの」

「で、でもさっき岩沢さん、怒って……」

「あなたには怒ってないし、私は元々こんな顔つきなの」

よく怒ってるって誤解されるけどね。と言うとまたその子は、ご、ごめんなさいっ!と謝ってきた。
どうやら普通の顔が怒ってるように見えると失礼なことを言ってしまったと思ってしまったようだった。

「慣れてるから気にしないで。
それに、そんなに怯えないで仲良くしてくれたら嬉しいんだけど?」

そう言って微笑むと、新人の子は何故か頬を紅潮させた。
ん?と思っているとその子は、私も仲良くしてもらいたいですっ!と両手を握ってきて凄い剣幕で言ってきたので思わず後ずさってしまった。
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