無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
大学を出て腕を捕んでいた手はいつの間にか真未の手を握っていて、この手際のよさは今まで彼女がいなかったと言うのは嘘なのではないかと疑ってしまいそうなほど鮮やかだった。

「ねえ、今公園で撮影してるって」

「行ってみようか」

歩いていると道すがらすれ違った人達が何やらそわそわした様子で近くにある広めの公園に足早に向かっていくのに気付いた。

「何か今日はみんな浮かれてる感じね?」

何かあるのかしら?と公園に向かっていく後ろ姿を見ていると、そう言えば今日だったっけ。と朝陽が呟いた。

「せっかくだし見に行ってみる?」

「何を?」

「いいもの」

楽しそうに微笑まれて手を引っ張られるままに公園に向かうと、行き着いた先にはすでに人集りが出来ていてその中央に何があるのか全くわからなかった。

「これじゃ何をやってるのかわからないわね」

「そうだな」

「……朝陽君?」

後ろから朝陽の名前を呼ぶ声が聞こえて振り返ると、年上の男の人が二人の繋がれた手と顔を見ながら少し目を見開いて立っていた。

「堀原さん、お久しぶりです」

「久しぶり。
そちらの女性はもしかして……」

「俺の彼女。
美人でしょ」

繋いだ手を少し上に上げて堀原と呼んだ男性に見せる朝陽に真未は手を離そうとするも、しっかり握られてそれは叶わなかった。
彼女……。とさらに目を見開いた堀原は真未に真剣な眼差しを向けて徐に口を開いた。

「大丈夫か?洗脳されてないか?」

「堀原さん、俺を敵に回すつもりですか?」

笑顔で言う朝陽に、冗談だ。と顔を背けながら言う堀原の冷や汗を流している様子から、強ち冗談で言ったわけではなさそうだと真未は苦笑した。
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