無自覚片思いの相手は策士な肉食系でした
「嘘っ!陽菜ちゃんがいる!」

「そう、今日はモデルの陽菜の野外撮影の日なんだ」

「それでこんなに人が多かったのね……」

納得して堀原と何か話して頷いている陽菜の横顔をじーっと見ていたら堀原と目が合い目を細められた。
なんだろうと思っていたら堀原は真未達の方を手で示して、不思議そうに陽菜が振り返った。

うわっ……!!

目が合った真未は興奮を抑えようと無意識に朝陽の手を強く握ってしまったのだが、対する陽菜も何故か驚いた様子で、ただでさえ大きい瞳をさらに零れんばかり見開いて、真未と朝陽、さらには繋がれた手を見ていた。

「朝陽、こっち見てるっ!」

「そうだな」

目を反らせないほど夢中になっている真未とは対称的に、落ち着き払った朝陽は肩を揺らせて笑うほどの余裕はあるらしい。
目が合ったままの陽菜がこちらに足を踏み出し何か言おうと口を開きかけたが、スタッフの人に呼ばれたらしく名残惜しそうに何度かこちらを振り返りつつ堀原とその場を去った。

「うわー……生陽菜ちゃんだー……」

「っ……そうだな……」

「何笑ってるの、陽菜ちゃんだよ!?本物だよ!?」

「わかってるけど、“生陽菜ちゃん”って生春巻きみたいだな」

そう言って一応は笑いを堪えてくれているらしい朝陽の腕を叩くと、真未は撮影に入った陽菜をじっと見つめていた。
たまにこっちに視線を向けてその度に柔らかく微笑む陽菜にドキドキしながらも、真未は目を反らすことなく真っ直ぐ陽菜を見つめていた。
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