晴れた雨

「か、薫ちゃん!」

トイレに行く途中だったのを思い出して、廊下を歩いていると、クラスの子に話しかけられた。

何故か少し怯えた顔をしている。

「なに?」

「あの、よく安藤くんってうちのクラスにくるじゃん…?

それにさっきも薫ちゃんと話してたけど…あの、もしかして…付き合ってるの?」

何かを気にしながら、小声で私にそう聞いてくる。

その理由がなんとなくわかって、私は苦笑いをする。

「いやいや、違うよ。

普通に友達として仲良いの。」

「そ、そうなんだ…

あの、安藤くんってその…良い噂聞かないから…だから…」

私を心配して忠告してくれているのがよく分かる。

でも、実際は違うのにそう言われるのは少し残念だった。

「心配してくれてありがとう。

でも、安藤すごくいい人だから大丈夫。」

「え、でも先輩殴ったり、タバコ吸ってたり、女癖が悪いとか…」

「それ全部誤解だよ。」

女癖が悪いというのは初めて聞いたけど。

「え、そうなの?」

「うん、それに安藤、警察官目指してるらしいから。」

「へぇ~それなら良かった!」

警察官を目指している。

その言葉のなんと効果のあることか…あからさまにホッとした顔をする。

そうなんだよね、これが普通の人の安藤に対する態度なんだ。

そう思うと、何故か心がモヤモヤした。
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