鬼神様のお嫁様
私の答えに迷いはなかった。
強く頷く私を見て、フッと優しく笑った彼は私の目の前までやってきた。
「裏の世界へようこそ、鬼神の花嫁」
そんな言葉と同時に「ここまでよく頑張った」と優しい声が聞こえたかと思うと強い風が私達を包み、一瞬にして別世界へと連れ去った。
(鬼の…花嫁…)
やっぱり彼は鬼神様だったんだ。
想像よりもずっと落ち着いていて、身なりも何だか鬼らしくない。
鬼の花嫁でも何でも良い。
こんな地獄から抜け出せるのなら何だって良い。
この時の私は鬼の花嫁である事の重大さを理解していなかった。軽率だった。
風が落ち着き咄嗟に閉じた目をゆっくりと開けると、そこはまるでお祭りのような、賑やかな雰囲気な街がそこにはあった。
色んな屋台や湯屋、仲見世処など様々で夜市と言うのはこう言う事を言うのだろうと思った。
行き交う者は人のようで人でない。