鬼神様のお嫁様
促されるままに入った部屋は和室だけれど普通とは部屋の雰囲気が違った。
置かれている家具がどうとか言うより、部屋の空気が他とは明らかに違うのだ。
清らかで、神聖な、そんな言葉がぴったり当てはまる様な和室だった。
「これから契りの儀を行う」
(花嫁って…本気だったんだ)
でも良い。あの家に戻るくらいなら花嫁の方が断然良い。花嫁でも何でもなって見せる。
今から俺が言う事を順番に行えと言われた内容はこうだった。
まず柏手を2回打つ。その次に鬼神様の真名を呼び御神酒が注がれた盃で杯事を行うと言う内容だった。
案外簡単なんだなと思いながら私は言われた通り柏手を2回打った。
「暁だ」
「……暁」
(あかつき、か……鬼神様でも真名があるんだ)
そっか、当たり前だよね。私達に名前がある様に神様にも名前があるんだ。
いつの間にか用意されていた御神酒が注がれた盃を手に取り口を付ける。
少し苦かったけれど量は大した事はないので一口で飲み込んだ。
これで儀式は終わりだと言いかけた所を私は遮った。
「あ、あの!1つ聞きたいの」
「何だ」
「暁様は」
「暁で良い」
「あ、暁は私たち東雲家を本当に呪ってるの?昔に鬼神様を祀る社を壊してでもその土地に屋敷を建てたから」
それを聞いて彼は鬼の面をゆっくりと外した。