鬼神様のお嫁様
「でも、何で花嫁をもらいたいと思ったの?」
素朴な疑問だった。
もっと他に良い選択があったはずなのに、何故わざわざ人間と結婚しようと思ったのか。
「何でも良いだろう。あれこれ詮索するな」
「うっ……ごめんなさい」
「まあ良い、部屋は沢山余っているから好きな所を使うと良い」
そう言い残して暁は部屋を出て行ってしまった。
離れの庭で少し会話をした時は、少し笑ってくれたし「よく頑張った」って優しい言葉もかけてくれたのに、いきなり冷たい態度取るんだなあ。
いや、もしかしてこっちが本性なのかも?
(一応、お嫁さんなんだからちょっとは優しくしてくれたって良いじゃない)
「はあ……」
でも、落ち着くなあ。ここのお屋敷。あの家とは比べ物にならないほど安心する。
床に大の字で寝転がり、風が運んでくる美味しい自然の空気を楽しみながら目を閉じた。
「へえ、君がアイツの花嫁か」
暁とは違う男の声が聞こえて慌てて飛び起きる。
襖に肩をもたれながらこちらを見つめる男がいた。一言でまとめれば暁とは正反対という感じだ。
「そんなに慌てて起きなくたって良いのに」
「だ、だって知らない人の声が聞こえれば誰だって驚くじゃない」
「ごめんごめん」