鬼神様のお嫁様
クスクス笑いながら私の反応を楽しむこの男は、着物をほんの少し着崩していて気怠そうで、どこか妖艶な雰囲気を見に纏っていた。
金色の綺麗な髪が風で靡く。
「あーあ、見つかっちゃった。愛されてるねえ、すみれちゃん」
ほんの少し口角を上げながら廊下を見つめる彼の視線の先にはーーー
「何をしている、天音」
(あまねって言うんだ…へえ……)
「花嫁を拝みに来たのさ。町中大騒ぎだよ、“鬼神様の花嫁がいる”ってね」
「馬鹿馬鹿しい」
「暁も大変だねえ、俺もすみれちゃんの事守ってあげようかなあ」
廊下の柱に持たれ掛かった暁は大きな溜息を吐いた。
「彼奴ら噂話が大好物だからな、民度が低すぎる」
「おお、言うね〜。本当は優しいくせに〜」
「わざわざそれを言いに来たのなら帰れ、馬鹿は嫌いだ」
そう言い放つと暁は私の手を取り歩いた。2人の会話に置いてけぼりで訳が分からない私は、されるがままに彼の後をついていく。
「天音、気安く名前を呼んでくれるなよ」
「おお〜こっわ」
最後の2人の会話は声が小さくて上手く聞き取れなかったけれど笑いながら暁を見る彼は心底楽しそうだった。
きっとこれが2人のいつものやり取りなんだろう。
(仲良しだなあ…)