鬼神様のお嫁様

相変わらず彼岸花が咲き乱れていた。

彼岸花には別名がいくつかあるけれど、その中に地獄花と言う別名がある。

正にこの家に当てはまる花の名前だ。

「こんな家、無くなっちゃえば良いのに」

思わずポツリと呟いた瞬間、吹いた風に乗せて鈴の音がチリンと耳へ届いてきた。

風がピタリと止み気配を感じて前を向くと、そこには男が1人立っていた。

濃藍色の着物と紺瑠璃色の羽織を着た男。

(鬼、の…面……)

冷や汗が背中を伝い、血の気が引いていくのが分かる。

般若のような鬼の面を付けているからか、男が何処を見ているのかは分からない。

だが、分かるのだ、はっきりと。


(あの人…私を見てる……)


あれが、もし、鬼神様なら?
私は連れて行かれるのだろうか?
何処に?

いや、食されるのかもしれない。

「何を今更、恐れている」

そんな事をぐるぐる考えていると男が話しかけてきた。
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