過去の精算
「疲れただろう? もう今夜はゆっくり休みな?」
「もぅ帰るの?」
体に違和感はあるし、変に緊張して疲れたのは確かだ。
けど…
まだ、彼と一緒に居たい。
「今日…帰らないとダメ?
まだ、一緒に居たい」
「ニューヨークにいる友人から、メールが来る事になってるから、見て意見を送らないといけないんだ」
「そう…
友人って…
ううん、なんでもない。 気をつけて帰ってね?」
意見を送ると言う事は、仕事の話なのに…
相手が女性なのか男性なのか、そんな事さえ気になって凄く不安になる。
彼だって子供じゃないし、向こうで恋人が居たとしてもおかしくない。
「なぁ…もし良かったら、今夜は俺のとこに来ないか?」
「いいの?」
「いつでも来て良いって言ったろ?」
「うん、行く!
でも、明日…」
「一緒に出勤すれば良い。
どうせ、俺が無理やり同伴出勤させたって事になるさ?」
同伴出勤って…
それだと、また彼が悪く思われる。
「良いの? それで?」
「今はそれで良い。
次期に、公認になるからな?」
公認になる…?
それって…
その後直ぐにお泊まりの準備をして、彼の部屋へと向かった。
彼の事だから、良い処に住んでるのかと思いきや、見た感じ築年数もとても古い様で、3階建てでエレベーターも無い。
マンションと言うより、これはコーポだ。
部屋の前まで行くと、“ 鍵開けて ” と言われ、つい先程貰った、鍵を鞄から出し、良いのと思いながら、鍵穴へと差し込んだ。
(カチャッ)と鍵の開いた音と共に、彼は“ お帰り ” と言う。
「・・・・・」
「いつか未琴から聞けると嬉しいけど?」
「考えておきます…」
「楽しみにしてます」と言って笑う彼が、愛おしく想う。
いつか、近い将来 “ お帰り ” って彼を迎えたい。
でも、その為には、母との思い出のあの部屋を出なくてはいけない。