過去の精算
「じゃ、どうしてそんな発想になる?」
彼へ病院で噂になってる事を話た。
「馬鹿だな? そんな根も葉も無い噂信じて?」
信じてって…
そりゃ、信じるよ?
だって、貴方は病院の跡取りで、私はただのOLだもん。
「でも、楓 銀行頭取の娘との縁談話が進んでるんじゃないの?」
「縁談じゃなくて、融資の事で相談に行った時に、あちらのお嬢さんとはお目にかかったけど、挨拶しただけで、縁談がどうとかって話一切してないよ?」
「本当に?」
「ホント!
未琴が真剣な顔してるから、何かと思えばそんな噂信じてるとはね?
俺はてっきり、未琴にプロポーズされるかと思った」
プロポーズ…?
私が?
「俺も、そろそろとは思ってたんだけど、お母さんとの思い出のこの部屋離れるのは、未琴が寂しそうだったし…
まぁ俺がここに入れば良いんだけど、ここシャワー無いからさ?
俺的には不便なんだ。
夜中に帰ってくる事もあるしさ?」
え?
そこまで考えてくれてたの?
「まぁリノベーションすれば良いんだろうけど…
そうすると結構、弄らないといけなくなるだろ?
浴室は勿論、ここ壁は薄いし、窓のサッシもヤバイしさ?
そうすると、お母さんがいた時とは、ほとんど変わっちゃうだろ?」
前谷君…
「だからもう少し、未琴の気持ち待ってから、と思ってた。
でも、泥棒が入ったって聞いてからは心配で心配で仕方ないんだからな!」
そこまで考えてくれてる、彼の気持ちが嬉しい。
「そこまで考えてくれてたなんて嬉しい。
でもね? 私がここを離れたくなかった理由、ちょっと違うの…
前谷君と一緒に住むのは、単なる同棲だと思ってたし…
いつか離れてしまうって…」
彼は、深い溜息をついて “ 馬鹿だなぁ ” と言った。
「いつも離さないって言ってたろ?」
「だって…」
「俺は初めから、未琴と結婚するつもりだった」
初めから?
だって…