過去の精算

事務長に共犯と言われて、身に覚えは無いが怖くなり、グラスを持つ手が震える。

共犯…私が…?
私…なにした?

お金の出し入れは、金庫番である事務長が全て担当していたけど、私はなにも関わってない。…筈。

でも…もし、知らない内に関わっていたとしたら…私も犯罪者…?
えっ! ちょっと待って!
って事は…バレてる…?

キャサリンの正体が…私だって…事…?

「どうした、キャサリンちゃん?」
事務長は微笑んで私を呼ぶ。

どうする?
このままキャサリンを続ける?
それとも…正体バラして開き直る…?

「え?えっと…」

どう答えれば正解なの…
事務長は本当に…私の事…

「キャサリンちゃんどうした? 顔色悪いぞ?」

事務長の問いかけに何も答えられない。
逃げたい…

私の様子がおかしい事に、気が付いた舞さんが助け舟を出してくれた。

「キャサリンちゃん、最後の最後まで稼がないと、ママに怒られるわよ?」

「え?」

「モーさん、キャサリンちゃんの餞別に良い(高い)ボトル入れてあげて下さいよ?」

「おーそうだな?
ママ、キャサリンちゃんの為に、レミーマルタン下ろしてよ!」

「レミーマルタンなら、今夜に相応しいルイ13世があるけどどうします?」

「いいね! それ持って来て?」

ママは、赤い観音開きの箱に入ったウイスキー。
レミーマルタン・ルイ13世を持って来た。

えっ!
それ絶対、めちゃくちゃ高いやつでしょう?
事務長の給料がいくらか知らないけど、大丈夫なの…

「こんな高いお酒…」

「キャサリンちゃんへの餞別だからね?
良いモノ入れないとね?
どうせ、僕のお金じゃないから、気にしなくて良いよ?」

事務長のお金じゃないって…どういう事…?




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