過去の精算
事務長に、私の正体がバレてるのか、どうかは実際のところ分からない。
でも…今の、“ 自分のお金じゃない ” って言葉が引っかかる。
賭けてみよう!
「モーさん、私が共犯って…もしかして、私に沢山お金使ってくれた事に、関係してます?」
事務長は『当たり』と言って、全て病院のお金だからね!と、私の耳元で言った。
自分が遊んだお金を、経費として落としてる?
病院のお金を着服してるって事…?
嘘でしょ…
特別良い人とは思わなかったけど、真面目な人だと思ってた。
そんな人だったなんて…
何年も一緒に仕事していたけど…
信じられない…
でも、このままにしておけない!
私は、トイレに行ってくると言って席を立ち、控え室のロッカーに置いてるスマホを、録音モードにして、ドレスの胸元へ差し込んで隠すと、お待たせしましたと席に戻った。
「モーさん、さっきの秘密の話ですけど、私の胸の奥深くにしまっておきたいので、もう一度話してくれます?
私の胸の奥へ?」と、私は自分の胸を指指した。
「キャサリンちゃんの胸に?」
「そう。私の胸にお話しする様に、もう一度お話して下さい。
ね? モーさんお願ーい」
『キャサリンちゃんの胸に? いいの?』と言って、イヤラシイ顔をする事務長。
仕事に厳しい事務長も、こんな顔するんだ?
このスケベ!
こんな姿、事務長の娘さんが見たらなんて言うかしらね?
ニヤけた顔を近づけてくる事務長に、絶対触っちゃダメだというと、事務長は怪訝な顔をした。
「だって私、未成年ですもん!
モーさんが犯罪者になってら、キャサリン困っちゃう!」
「キャサリンちゃんが未成年…?」
「私、この世界に入ってまだ一年になりません。
だから未成年ですね?
ほら、ママが怖い顔してます!
モーさんお触りダメです!」
ママの怖い顔を見て、事務長は苦笑いして、私の胸元へ近づく事務長の顔。
そして、今にも触れそうな事務長の唇。
事務長はニヤケながら、ゆっくり話し出した。
胸に掛かる生暖かい吐息に鳥肌が立つ。
気持ち悪い!
拳を握り、終わるのひたすら待っていた。
お陰で、事務長の悪事の証拠が手に入った。