過去の精算
送別会が終わると、帰って行く女の子一人一人へお礼を言い、お別れのハグをした。
明日、ここ(ライオン)を出て東京へ発つ。
この後、ママから東京のお店を紹介してもらう事になってる。
「キャサリンちゃん…」
「朱里ちゃん泣かないで?」
女の子達みんなが私を惜しんでくれる中、朱里ちゃんはひとり涙で、顔はぐちゃぐちゃになったいた。
「だって…だって…もう会えなくなる…」
「そんな事ない。 また会えるって!
連絡するから、ね?」
「絶対ですよ?」
「うん!」
私がこっちへ戻って来る事は多分もう無い。
アパートの荷物も、住む所が決まったら業者にお願いするつもりでいる。
ただ、母の位牌だけは一緒に持って行きたい。
東京へ発つ前に、一度アパートへは寄るつもりでいる。
「キャサリンちゃん、お疲れ様」と声を掛けてくれる舞さん。
「お疲れ様です。
舞さんにも随分お世話になって、本当にありがとうございました」
「お礼言われる様なお世話なんてしてないけど、良かったら最後に飲まない?」
私も舞さんと、もう少し話したいと思っていた。
是非と答えると、ならと言って、ママがレミーマルタン・ルイ13世を出した。
「ママ、これ…」
ママが出したレミーマルタンは、事務長のネームプレートが下がってる物だった。
「良いのよ!
どうせあの人は、もうここへは来ないから!
来ないと言うより、来れないが正しいかしら?」
え?
私が居ないから?
違う。ママは今、来れないって言った。
なぜ…
グラスにウイスキーを注ぐと、ママは美味しいわねと言って、更に注いでいた。
本当に良いの…
「キャサリン…いえ、未琴ちゃん。
本当にこのままで良いの?」
ママの問い掛けに、私は何も言葉が出て来なかった。