過去の精算
未来の為に
昨夜、ママと舞さんから、前谷君の私への想いと、彼と院長の病院への想いを聞かされ、自分に素直になれと説得された。
本当は、ママに東京のお店を紹介してもらったら、事務長の悪事を録音したスマホを、ママへ託してお店を後にしようと思っていた。
私は今、ママに付き添われ、もう二度と来る事も無いと思っていた、前谷総合病院の院長室へ来ている。
目の前に座る前谷君と院長の顔から私は顔を背け、窓の外へと視線を向けていた。
「元気そうで良かった…」
「私には、母から貰った元気だけが取り柄ですから!」
院長の心配する言葉にも、私は棘のある言葉で返していた。
「沙織も…いつも明るくて元気だった…」
「元気な人が死んだりしない!」
「未琴ちゃん!」
ママの叱責にも気にする事なく、私は続けた。
「母を捨てたあんたに、母の思い出を語られたく無い!」
「すまない…」
小さくなって謝る姿は、もう私の知ってる院長では無かった。
「未琴…実は親父…」
何かを話そうとする前谷君を、私は遮った。
「なんの話をしようとしてるか知らないけど、私は町の人達の為に、仕方なく来たの!
だから、余計な話は聞きたくないし、したくも無い!」
私が怒りを露わにしたその時、院長室のドアが開き院長夫人と事務長が入って来て、二人は、私の顔を見て驚き、院長夫人に至っては、顔を歪め汚い物でも見る様な顔をした。