過去の精算
好きでも無かった…?
結婚が災厄だった…?
母があんたの為に捨てられたのに…
お母さんの幸せを返して!
あまりのショックで、怒りの波が怒濤の様に押し寄せ、激しい鼓動が止まらない。
自分の息子を、道具としてしか見ていないなんて…なんて酷い人親なの…
なんで…なんでこんな女(ひと)を選んだの?
なんでお母さんを捨てて、この女と結婚したの!?
「でもね?
和臣が病院を継ぐより、絶対売った方がお金になるの!
和臣の役目はもう終わったのよ?
和臣だって私の為だったら、医者辞めたって良いわよね?
もし医者を続けたいなら、何処の病院で勤務医として働けば良いのよ?
ね?そうでしょう?」
自分の子供を捨て駒の様に扱うなんて…
許せない!
こんな女に好きにはさせない!
「私、院長の生前贈与のお話お受けます!
病院も全ての財産を、私が受け継ぎます!」
隣に座るママを見れば、微笑んで頷いてくれた。
これが一番良い。
悩んで苦しんだけど、これが一番正しい選択なんだ。
そうでしょう?
お母さん…
「な、なに言ってるの!?
あなたは、財産放棄するって言ったじゃ無い!
今更、勝手な事言わないでよ!?」
「ええ。 放棄すると言いました。
でも、書類にはサインも捺印もしてない。
あなたが病院を売るって言うなら、私が病院も全財産を受け取り、そして前谷君へ渡します」
「あら、そう?
ならどちらでも同じだわ?
和臣の物は、私の物だもの!」
勝ち誇ったように笑う院長夫人。