過去の精算
彼の言葉が何を意味してるのか、私には分からなかった。ただ…彼の寂しげな瞳が全てを物語っている様にも思えた。
私達は…
やっぱり…一緒には居られない運命なの…?
込み上げてくる気持ちを抑え、これから手術を受ける父に、心配かけない様にと、気丈に振る舞い、笑顔で父を送り出そうと思った。
「じゃ、行ってくるよ?」
「う、うん…」
「心配しなくても、和臣の事だ、手術は無事に終わる」
父は私が手術の事を心配してると思っているのだろう。
勿論、父の手術の事も心配してる。
でも…
「未琴ちゃん、後は若先生に任せましょう?」
「はい…」
“ じゃ!” と言う父にいってらっしゃいと言って見送り、その後は、手術室の前の患者家族の待合室で、ママと二人で待っていた。
「未琴ちゃん、大丈夫?」
私は頷き大丈夫と答える。
そして、予定時間の15時間が過ぎようとした時、手術の終わりを告げるランプが消えた。
終わった…
「終わったわね?」と言うママの言葉に、安堵の涙がこみ上げて来る。
術後はそのままICUで暫くの間、経過観察する事になっている。父に会えるのは、もう暫く後になるだろう。
涙を拭っていると、ママは良かったわねと言ってくれる。
良かった。
本当に良かった。
「未琴ちゃん、行っていらしっしゃい?
彼に会いに?
そして、聞きたい事聞いて来なさい?」
ママは気付いていたのかもしれない。
私達に何かあった事を…
私は頷き、彼の元へと急いだ。
聞きたい。
彼が何を思ってるのか…
何を考えているのか…
私の事が嫌いになったなら…なったなら…
それは、仕方ない。
彼の事を諦めるしか無い。
それが、彼の求める幸せなら…
でも、医師としての…
父の息子としては、ここ(病院)を離れて欲しくない。
彼が、私がここ(父の側)にいる事で辛いと言うなら…私は喜んでここを離れよう。