過去の精算
「暴れるな!」
「嫌だ! 離して!」
え?
「やっぱり腫れてるな?」
あれ?
足…?
「まぁ骨には異常ない様だが、あまり無理するなよ?」
また、乱暴されるのかと思ったら、私の足を心配してくれて、診てくれたのだ。
前谷君は往診鞄から、湿布と包帯を出し、足首を治療してくれた。
「あ、有難う……」
「腹もいっぱいになったし、さぁ、出かけるか?」
「は?」
「出かけるんだろ?
乗せて行ってやるよ?」
「いえ、大丈夫です……」
「何処だかしらないけど、その足で無理したら、明日からの仕事にさしつかえあると思うが?」
どうして…?
あんなひどい事しておいて、今度は心配したり優しくするの?
なんか調子狂っちゃうじゃない!
「でも……先生、病院に戻らないと…?」
「もう外来は終わってるし、救急は院長もいるから大丈夫だろ?で、場所は?」
本当に良いのかな…?
「桜の丘公園……です…」
前谷君の車に乗せてもらうと、桜の丘公園へと車は向かって走り始めた。
「本当に大丈夫ですか?」
「なにが?」
「病院ですよ?」
「ホントにあんたは、病院…いや、町の人間が大切なんだな?」
治療に関われなくても、少しでも町の人達の助けになれたら、そう思う気持ちは今も持っている。
それが、私の為に亡くなった母の想いに報いる、今の私が出来るただ一つの事だと思うから。