過去の精算

「良いから、さっさと降りろ!
予約入れてあるんだ!」

予約入れてあると言われ、既にお店から迎えに出て来てるスタッフを前に、逃げる訳にもいかず、仕方なく車を降りる事にした。

「予定通り頼む!」

前谷君は、そうスタッフに言うと、彼は何処かに行ってしまった。

オシャレに興味のない私は、美容師のされるがままになっていた。
髪は勝手に染められ、そしてパーマまでかけられ、見る見るうちに、全くの別人になっていく、鏡の中の自分に驚いていた。

「素材が良いと、私どもも楽しいですわ!」

「素材が良い?」

「あっ! 失礼しました。
綺麗な方が相手だと、私どももやり甲斐があると言う事です」

やり甲斐ねぇ…

「お客様の中には、芸能人と同じ髪型にと言われる方や、雑誌の切り抜きを持っていらして、この髪型にと、言われるお客様も多くいらっしゃいますが、正直似合う方ばかりじゃ無いんですよ?
髪質や顔の大きさや形によって、イメージが変わってしまいますから…
美容師の立場からしては、正直困ってしまいます。
でも、お客様の様に顔が小さく、綺麗な方だと、どんな髪型でもお似合いになりますから?」

はぁ…それはどうも……

「宜しければ、ネールもされますか?」

ネール…?
「あっいえ、ネールは結構です。
仕事がら、あまり好ましく有りませんから」

「そうですか? 残念ですわ…」

美容師とそんなやりとりをしていたら、ちょうど前谷君が、戻ってきた。
会計をしようとしたら、横からスッと前谷君がカードを出したのだ。

「自分で払いますから、結構です!」
出してもらう関係じゃないし、関係にもなりたくない!

「それでは、本日のお会計は4万7,500円になります」

4万7,500円??
嘘でしょ・・・




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