過去の精算

自分で払いたくても、財布の中には千円札が3枚と数枚の小銭しか入って無い。

「すいません…お借りします。
必ず後でお返ししますので…」

下げたく無い頭を前谷君へ下げ、支払いを彼にお願いした。

はぁ…
今月どうやりくりしよう……

毎月、10万の生活費の中から、家賃や光熱費を払って、残りを食費にしてるのに、一回の美容室代に5万も使って……
給料日まで、まだ半月以上あるのに、私、生きていけるかな?

私は頭の中で、口座残高を確認していた。
そして車へ乗ると、彼は私の髪へ手を伸ばして来た。

「似合うよ?
やっぱり女性は綺麗にしてた方が良い」

「それは、若先生の勝手な希望であって、押し付けるべきモノでは無いと思います!」

「そう?
女性はみんな、綺麗になりたいと願う生き物だと思ってたけど?
君は違うの?」

「さぁ?
他の女性は知りませんが、私はそんな事考えた事有りません。
でも…以前一度だけ、ある人の横に並べるなら、相応しい女性になりたいと思った事はあります。
それが、着飾る事かは分かりませんが?」

その後、車は私のアパートへと向かった。
車がアパートに到着すると、近所の人に見られない様に、私は慌てて車を降りた。

「送って頂き、有難う御座いました」

頭を下げ急ぎその場を立ち去ろうとすると、彼に忘れ物が有ると言われてしまった。

忘れ物って…?
鞄は、ここ自分の手にある。
他に何を忘れたと言うのだろうか?

すると、前谷君は車を降り、後ろの座席から見覚えの無いショップバックを降ろし始めた。





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