過去の精算
噂になった時、彼に迷惑かけてはと、会う事をやめようと言ったが、彼はそれを受け入れなかった。
「他人が何言おうが、君は君だろ?」
前谷君…
「・・・・・」
この時、私の中で恋心が芽生え始めたのを知った。
「成績だって、僕より君の方が上だし、僕が君に迷惑掛けても、君が僕に迷惑かける事なんて、なにもないだろ?
でも、僕は負けないよ? いつか君を絶対負かす!
僕は、この町の人達を一人でも多く助けれる、父の様な医者になるだ!」
強い意志が満ち溢れた彼の姿は、とても輝いていた。
前谷君…
凄い…
「兎に角、今は外野に耳傾けてる暇なんて、僕達にはない筈だろう?」
そう!
外野が何を言おうと、それに耳傾けている場合じゃない。
お母さんが応援してくれてるんだもん!
お父さんと同じ外科医になれる様に、頑張らないと!
「でも、前谷くんってホント凄いよね?
スポーツも出来て、家族の期待に応えるためにって頑張ってるし、この町の人達の事も考えてる。
頑張り屋の前谷君なら、きっと良いお医者さんになるよ?」
「その為にも、今度のテストは、君より良い点数取って、1番取らないとな!」
「私だって、夢を叶える為に頑張るもん!
そう簡単には1番は譲らないんだから!」
「じゃ、いつか木村さんと、一緒にオペ組める様に僕頑張るよ!」
「うん、私も頑張る!」
「約束だよ?」と言って、彼から差し出された右手小指。
初めて出来た友達、初めてしった恋心。
そして初めての同志との約束が嬉しくて、彼の小指へ私のものを絡ませ約束を交わした。
「うん。約束!」
まさか、この約束を破る事になるとは、その時の私は、まだ知らなかった。
3年になると、私達はクラスも別れてしまい、前谷君は、本格的に受験体制に入る為に、家庭教師をつける事になったらしく、図書館で会う事もなくなった。
そして、学校の彼は今までと違って、いつも物憂げな感じで、友達と居る事も少なくなっていた。
廊下ですれ違っても、どこかよそよそしく顔さえ背けるられる様になっていた。
その頃、彼に変な噂が立った事があった。
前谷君の成績が良くないのは、院長先生の実の子では無いからと…
確かにテストの順位こそ1番ではないが、点数としてはほんの数点の差で悪くないし、いつも10番内には入ってる。
そんな噂、嘘に決まってる!
でも、ライバルでは、仲良くは出来ないのかな?
ちょっと寂しいけど仕方ないか…
私は、自分の恋心に蓋をして、受験勉強に勤しむ事にした。