また、君の優しさで包み込んで。
なんで…
りゅうちゃん?
「りゅう、ちゃん…?」
「りゅう~!だれぇーこの子」
「知らね。誰だろな」
「…え…」
なに、それ。
もしかして人違い?
でも今女の人、りゅうって言ったよね。
どういうこと?
「りゅうちゃん、なんだよね…?」
「は?お前、誰?大丈夫かよ、この女」
なんで、なんでなの?
「りゅう、行こうよ~!こんな女なんてほっといてぇ~」
思い出した。
この女の正体を。
鈴木さんだ。
私をいじめていた、張本人。
でも、りゅうちゃん、私がこの人にいじめられていたこと、知ってるよね。
なのに、なんで手を繋いでいるの?
「…して、離して!」
涙が流れる。
前は私が泣いたら抱きしめてくれたのに。
ねえ、はやく私を抱きしめて。
「りゅう~はやく行こ~!」
「ああ」
ふたりはどこかに行ってしまった。
まるで、カップルのように、手を繋いで。
ー違うか、あのふたりはカップルなのだろう。
ほら、今キスをした。
見たくない。あんなの、見たくない。
私は耐えきれず、足早にその場から離れた。
頑張ったよ、私、頑張って病気治したんだよ?
なのに、なんで私を一人にするの。
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