グリーンピアト物語~醜い妖精とイケメン君~(完結)

 洗面所には歯ブラシが2つ用意してある。

 ピンクの歯ブラシと青色の歯ブラシ。

 真新しいピンクの歯ブラシを見ると、ノエリは嬉しくなった。


 歯磨きをして、顔を洗ってノエリがリビングへ向かうと、ジックニーが起きてきた。

「あ、おはよう。早起きなんだね」

 パジャマ姿のままのジックニー。
 
 グレーのフリースのパジャマを着ていても、ジックニーはとてもカッコいい。

 背丈も高くモデルのようである。


 この人が・・・私と結婚してくれたなんて・・・ありえないよ・・・。


 ノエリがそう思っていると、突然頬に暖かい唇があたった。

 驚いてノエリが見ると、嬉しそうに笑っているジックニーが隣にいた。

「おはようのキス。家族と暮らしていた時は、いつもしてたんだよ。誰かと朝を迎えるのは、何年ぶりかな? 」


 家族・・・。

 そっか、この人には家族がいるんだ。

 少しだけ寂しげな目をして、ノエリは視線を落とした。


「ちょっと待っててね、今、朝ご飯作るから」

「あ、いいです。・・・朝ご飯、食べないので」

「え? どうして? 朝って一番大事なんだよ。少しでいいから、ちゃんと食べて」

 
 だって、朝ご飯なんて食べた事ないから・・・。

 そう言おうとしたノエリだが、言葉をのんだ。


「座っててね」

 そう言って、洗面所に向かうジックニー。

「朝ご飯・・・食べるのは大事なんだ・・・」

 
 ボーン。

 振り子時計がなった。

 時間は朝7時を指していた。



 しばらくして、ジックニーが朝ご飯を用意してくれた。

 トーストとサラダとヨーグルト、そして温かいコーヒー。

「ごめんね、ご飯炊くの忘れてたんだ」

「い、いいえ・・・」

 朝ご飯を食べた事がないノエリにとって、軽くでも用意されているのが嬉しかった。

 

  
 

 


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