グリーンピアト物語~醜い妖精とイケメン君~(完結)
 トーストはフンワリと温かく、塗ってあるバターも美味しく、サラダも美味しいドレッシングがかかっている。

 コーヒーも甘くなくちょうどいい。


 朝って気づかなかったけど、お腹すいていたんだね。


 ノエリは初めての朝ご飯に、少し感動を覚えた。


「ねぇノエリは仕事はしているの? 」

「は、はい・・・」

「どんな仕事? 」

「あ・・・」

 ペンキを塗る仕事ですって・・・言えない・・・。

 ノエリは顔が醜く、就職にも困っていた。

 事務職は全てお断り、営業や販売もお断り、唯一雇われたのは塗装の仕事。

 嫌なペンキの匂い、そして汚れ、そんな場所は顔なんて関係ない。

 そんな仕事をしているなんて言えない・・・。


「もう、仕事はしなくていいから」

 ノエリが答えに困っていると、ジックニーが言った。

「どうしてですか? 働かないと、生活ができません・・・」

「ノエリは働かなくていいよ、俺がちゃんと養ってゆくんだから」

「え? 」

「だって、俺達夫婦だよ。生活は共にするんだ、ノエリが働かなくてもちゃんと生活できるよ。お金の事なんて心配する事ないよ」


 養う・・・
 
 結婚するってそうゆう事?

 でも、本当にいいのだろうか? 

 私が働かなくても・・・。


 ノエリは戸惑った顔をしていた。


「ノエリは何か、好きなことはないの? 」

「好きなことですか? ・・・そうですね、本を読んだり映画を見たりは好きです。・・・あと・・・随分と昔ですが、ヴァイオリンを弾いていた事があります。途中で辞めましたが・・・」

「そうなんだ。すごいね、弦楽器が弾けるなんて。俺も、聞いてみたい。ノエリのヴァイオリン」



(ノエリ、とっても良い音色を奏でるんだね)

 遠い昔、ノエリの父親が生きていた頃、よくノエリのヴァイオリンを聞いて喜んでいた。

 重度の心臓病だった父は、急激に弱って行った・・・。

 息を引き取る寸前まで、ノエリのバイオリンを聞かせてほしいと言っていた。


 あの頃は・・・

 目が潤んだのを感じ、ノエリはハッと我を取り戻した。


 
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