グリーンピアト物語~醜い妖精とイケメン君~(完結)
「どうかした? 」

「い、いいえ。何でもありません・・・」

 視線を落としたまま、ノエリは笑って見せた。


「俺は仕事だから、そろそろ行くね。ノエリは疲れているようだから、ゆっくり休んでいていいよ。帰りは19時くらいだけど、夕飯は俺が作るから気にしないでね」

 
 朝食の食器を片付けて、ジックニーは仕事へ行く準備を始めた。

 
 好きなことって聞かれて、ヴァイオリンを弾いていた話までしてしまった。

 ずっと思い出さないようにしていたのに・・・。



 ノエリは1人マンションに残され、寝室へ向かった。


 白いバッグを手に取ると、中から手帳を取り出した。

 手帳を開いて中を見ると、フッと目を細めるノエリ。


「・・・捨てようとしても、捨てられないものって本当にあるのね・・・」

 手帳を胸に当て、ノエリはギュッと唇を噛んだ。



 それからお昼を回る頃。

 ノエリはリビングの窓から外を見ていた。

 
 窓を開けるノエリは、口と鼻が隠れるマスクを着けていた。

 こうしていれば、少しでも顔が隠れる。

 そうすればジックニーも恥ずかしくないだろう。

 ノエリはそう考えた。

「仕事で使っていたマスク。鞄に入れていて良かった」


 ここち良い冬の風が当たり、ノエリは深呼吸した。


 ブーッ ブーッ・・・

 ノエリの携帯電話が鳴っている。

 着信表示を見ると、ノエリの顔色が変わった。

 ノエリが、出る事をためらっていると、着信は切れてしまった。


 だが少しするとまた、着信が入る・・・

 しばらくして着信が切れる。

 そしてまた入る・・・。

 まるでノエリに絶対電話に出なさい! とでも言っているかのようである。


 ノエリは耳をふさいだ。

 しばらくすると着信は鳴らなくなった。

 
 
 
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