さようなら、また夜に

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「久しぶり。」

「本当は1日ぶりだけどね。」

「長く感じるなー。」

「仕方ないよ、この世界では。」

本当に、海の中にいるみたい。

魚のように揺蕩う音符。

波の音のように控えめに流れる音楽。

その全てが、私の記憶を呼び起こす。

そして、苦しめる。

「今日君に会う前に、
ある人に出会った。」

「誰?」

「その人は、この光の先に
楽器があるって。

もしかしたら、
探し物が見つかるかもしれない。」

「楽器で、見つかるの?」

「こんな世界の楽器なんだから、
普通じゃないはず。」

誰なのか訊くのを忘れたまま、
またひたすら進んだ。

不思議なのは、普通に歩いてること。

水の中にいるみたいなのに、
歩いてるって。


そう言えば、昨日は覚める瞬間が
分からなかったな。

今日はとりあえず楽器まで、
辿り着かないと。

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