独占欲強めの部長に溺愛されてます
キスのその先
「えーっと、これはこっちかな。うーん、それともあっちがいいかな」
長いレザーソファにクッションを並べながら、あれこれと思案する。
野々花は、加賀美の新居となるマンションで、引っ越しの手伝いをしていた。
加賀美の父親の日本赴任が決まり、明後日には帰国予定となっている。加賀美は再びひとり暮らしを始めるのだ。
野々花のアパートからも近いその部屋は、緑豊かな個人邸宅や瀟洒な集合住宅が街並みを形成する中にあり、とても静かな低層マンションである。
リビングダイニング、寝室のほかにもふた部屋あるという贅沢な間取り。広いバルコニーには季節に応じて植物を置いたら素敵だろうと、自分の部屋でもないのに想像力が働く。
ふたりが付き合い始めて一ヶ月が経過しようとしていた。
「野々花」
不意に手をとられたかと思えば、加賀美に強く引き寄せられる。