独占欲強めの部長に溺愛されてます
お客の年の功はさまざま。男性に交じって、ふたつ並んで空いているカウンターに腰を落ち着ける。
注文は加賀美が来てからにしようと、出されたおしぼりで手を拭き、お冷でひとまず喉を潤した。
透明のアクリル板の向こうでは、網の上にたくさんの串が並び、マスターの手早い動きでくるくると回される。香ばしい匂いが食欲を刺激した。
それから五分後、ドアが開けられる音につられて顔を向ける。加賀美だった。
すぐに野々花に気づき、爽やかな笑みを浮かべる。否応なしにドキッと弾む鼓動。
野々花の恋心は、まだくすぶっている。
「お疲れ様です」
軽く頭を下げた野々花の隣に、加賀美は腰を下ろした。
「迷わずに来られたか?」
「はい。ですが、本当に気になさらないでください。あんな場所で奇声をあげていた私が悪いので……。今日はそれをお伝えしようと思ってここへ来ました」
「そういうわけにはいかないよ。大切な部下の悩みを解消するのは上に立つ者の務めだ」
なんて真面目な人なのだろう。