独占欲強めの部長に溺愛されてます
部長という立場上、ほかにも頭を悩ませる案件があるだろうに。一社員の野々花の悩みをわざわざこうして聞こうというのだから。
素晴らしい人格。さすがは部長!と野々花が心の中で絶賛していると、加賀美はさらに続けた。
「っていうのは言い訳だな」
「言い訳?」
「あ、いや。こっちの話」
加賀美は着ていたジャケットを脱ぎながら、なにげなくそう言った。
(なんだか今の意味深じゃなかった? 言い訳ってなんだろう。ま、まさか……! 私とこうして食事をしたかったとか? ……いやいや、まさかまさか。部長がそんなふうに思うはずがない。だって、加賀美部長だよ? みんなから多大なる人気を誇る、ハイスペックイケメンだよ? ありえないでしょ)
加賀美の言葉を深読みしそうになったが、慌てて冷静さを取り繕う。
自分はいったいいつから想像力が逞しくなったのだろうか。些細な出来事を自分に都合のいいように考え過ぎだ。
「なに飲む? まだ頼んでないだろ?」
「えっ……あぁ、はい」
「どうかした?」