独占欲強めの部長に溺愛されてます

これがもしも野々花の向かいのデスクにいる松村だったら、瑠璃は変わっていたかもしれない。彼女の場合は、もしかしたら女同士じゃなく男性から指導された方がいいのではないか。

この頃はそんな考えも野々花の頭にちらほらと浮かんでいた。


「思い切って、間宮ひとりに仕事をひとつ任せてみたらいい」
「とんでもないです」


思いがけない提案を加賀美がするものだから、声は大きくなり妙な抑揚までついた。

瑠璃に一任するなど、もってのほか。それこそ、その仕事は捨てたも同然になる。


「どうして?」
「本当にひどいんです」


そこまで言ってから悪口だと気づき、「私の教え方が悪いんですけど」と慌てて付け足す。教育係が別の者だったら、もっと仕事を覚えた可能性はあるだろうから。

加賀美はクスンと鼻を鳴らしてからビールに口をつけた。

(わわっ、きっと同僚の悪口を言う嫌な女だと思われたよね……。これだから女ってやつはって軽蔑されたかも)

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