独占欲強めの部長に溺愛されてます
だとしたら、野々花はやはりそんな人たちとの付き合いはやはりできないのではないか。
この際、加賀美を気にせず食べてしまおう。どう思われても関係ない。だって、野々花の恋は木端微塵に砕け散っているのだから。
ここは申し訳ないけれど、仕事のストレスを発散させてもらおう。
野々花は加賀美の視線をものともせず、次から次へとやきとりを頬張る。そうしてマスターもびっくりするくらいの串の残骸ができあがり、ビールジョッキも二杯空にした。
普段ならジョッキ一杯で十分だが、おいしいやきとりでお酒が進んだのかもしれない。ほろ酔い気分で気持ちがいい。
そろそろ帰ろうとなり、呼んでもらったタクシーに部長と乗り込んだ。
おおまかな住所を告げてから、加賀美は隣でブリーケースからタブレットを取り出した。なにか調べものか仕事のようだ。
野々花は邪魔をしないようにおとなしくシートに身体を預けた。
ちらちらと加賀美の横顔を盗み見る。
(あぁ……本当にかっこいい。素敵。もう最高)
ほんの数十センチ先で加賀美の顔を数十分にわたって見られるなんて、まさに夢のよう。
そのくせ車の振動の心地よさと、ほどよいアルコールのせいか、つい眠くなる。