独占欲強めの部長に溺愛されてます
部長の隣で眠りこけるわけにはいかないと懸命に目を開くが、次第に瞼は重くなり、そうしているのが困難になってきた。
上司は隣で仕事をしているのに寝るのは失礼だと頭ではわかっていても、急激に襲い掛かる睡魔に抵抗できず、潮が引いていくように静かにさらわれていった。
目が覚めそうで覚めない。意識の狭間を行き来しながら、寄りかかった窓の揺れに身を委ねていると、ふと頬にやわらかいものが触れた気がした。
頭をぼんやりさせたまま薄っすらと目を開けると、加賀美の顔がゆっくりと離れていく。
(……え? もしかしてキスされた?)
そう考えて、即座に否定する。
(そんなわけないよね。妄想も甚だしい。でも、さっきの感触はなんだろう……)
必死に考えようとするものの睡魔には敵わず、再び薄らいでいく意識。野々花はアパートに着くまで眠り続けたのだった。