独占欲強めの部長に溺愛されてます
野々花は改めて頭を下げた。
加賀美からアドバイスをされなければ、今夜これから職場に行って仕事を片づけるはめになっていただろう。さらには夕食の心配までしてくれて、頭が上がらない。
「明日は無理せず休んでもいいからな」
「いえ、もう治りましたから」
両手で拳を握って軽く振る。まだ頭痛はいくらか残っているが、ひと晩寝れば完治するだろう。身体の感覚からして、熱も下がっているようだ。
ちょっとした疲れが噴き出ただけだろうから。
「じゃ、今夜はゆっくり寝ろよ」
加賀美が最後に見せた涼やかな笑顔に胸が高鳴る。失恋が確定しているとはいえ、加賀美への恋心が簡単に消えてなくなるわけでもない。
「あの、今度お礼をさせてください」
「気にするな。当然のことをしたまでだ」
「そういうわけにはいきません」
仕事で疲れているだろうに、わざわざお弁当まで届けてもらったのだから。
何度となく押し問答を繰り返し、最後には「考えておくよ」と言い置き、加賀美は帰ったのだった。