独占欲強めの部長に溺愛されてます
時を止めて


「それにしても野々花、うまく加賀美部長に付け込んだわねー」


人聞きの悪い発言をするのは、言わずと知れた望だ。ランチタイムにふたりでやってきた会社近くのカフェで、望は熱々のエビドリアにふぅふぅ息を吹きかけた。

野々花が加賀美の自宅に、リッキーの遊び相手という名目で通い始めてから一週間が経過しようとしている。

加賀美はこれまで犬を飼った経験がないそうで、リッキーにほとほと困っていたらしい。
あまり詮索しない方がいいかと誰から預かったのかは聞いていないが、慣れない犬の相手を買って出るのだから、よほど大切な相手なのだろう。


「付け込んだなんて言い方はやめて」
「ごめんごめん。でも、備品庫であの雄叫びを聞かれたのに、逆に接近してない?」


望の言う通りではある。
あんな場面を見られたにも関わらず、仕事以外で加賀美と一緒にいられるのだから。

失恋が確定したはずだったのに、細い糸のような繋がりが残されている気がして諦めがつかなくなってしまった。


「だけど、リッキーを返すまでの間だけだから」

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