希望の夢路
僕は、彼女の真新しい靴に再び触れた。ヒールは、少し高め。
ハイヒールは憧れだけど足もすごく疲れてしまうし、転ぶわけにはいかないから、と彼女が言っていたことをおもいだす。
「足、疲れない?」
「大したことないです。でも、ちょっとだけ…」
「ちょっとだけ疲れた?」
「はい…でも大丈夫です」
彼女はにこりと笑った。
「博人さんは、ハイヒールの方がいいですか?」
彼女の言いたいことはわかった。
彼女の頭には、ハイヒールを履いて背筋をぴんと伸ばして歩く綺麗な女性像が浮かび上がっているのだろう。
「ん…?そんなこと、ないよ?」
背伸びした彼女も可愛いとは思う。
でも、彼女にはそのままでいてほしい。背伸びしない、そのままのーありのままの彼女でいてほしいんだ。
そんなことを思いながら僕は、彼女の靴から手を離し、彼女のくるぶしからふくらはぎ、そしてフラミンゴのような細い足を撫で回す。
「ぴっ、ぴろとさん…!」
驚いた彼女は、咄嗟に甲高い声を上げた。驚いたということはよく伝わってきたが、僕は『ぴろと』じゃなくて『ひろと』だぞ。
「んっ、やっ…!」
驚かせて、しまったかな?
でも、ごめん心愛ちゃん。
僕の手は、止まりそうにないんだ。
彼女が僕の手を制止しようと、僕の手を掴んだ。僕は彼女の膝を優しく撫でた。しかしそれだけでは飽き足らず、僕の手は彼女の太腿へと滑る。
「お、お願い…だめっ…」
「君が煽るからいけないんだよ」
止まらない、僕の手。
「わたし…そんなこと、してない…」
彼女は拗ねて俯いてしまった。
「やめる?」
僕がそう言うと、彼女はこくこくと首を上下に動かした。
「仕方ないな」
僕は手を止めた。
こんなんじゃ、先が思いやられるな。
やれやれ。
でも、彼女のペースに合わせてゆっくり進んでいこう。急ぐ必要など、ないのだからー。

ゆっくりと顔を上げた彼女と、目が合った。
「僕が、脱がしてあげるから」
彼女は、顔を真っ赤にしていた。
僕は彼女のパンプスを脱がした。
ああ、なんて細くて白い足なんだろう。彼女の足に再び触れたくなる衝動を、僕は必死で抑えた。
「博人さん?」
彼女は不思議そうに隣にいる僕を見た。
「なんでもない。行こう」
「はい!」
この眩しい笑顔には、勝てる気がしない。そう思いながら僕は彼女の手を握り、リビングへと向かった。



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