希望の夢路
「わあ、すごいー!」
彼女は、リビングに入ってすぐに感嘆の声を漏らした。
キョロキョロとリビングを見渡して歩き回る彼女は、まるで子供だ。
「心愛ちゃん」
僕がそう呼んでも、夢中で周りを見る彼女は気づいていない。
「心愛ちゃんってば」
彼女を追いかけようと彼女の背を追いかける。彼女の行く手を阻もうと前に回り込もうとするも、彼女は僕から離れて窓へと向かって走る。
「わあ、すごくきー」
すごく綺麗、と言おうとしたのだろう。でもその途中で僕は、彼女を後ろから抱きしめた。
「ひ、博人さん…?」
振り返ろうとする彼女を少し強引に窓に押し付けた。彼女は、困り顔をしながら窓に両手をついた。
「心愛ちゃん…」
「怒ってますか…?」
彼女の声は震えていた。
「怒ってない。ただ…」
「ただ?」
「心愛ちゃんは僕だけのものだって…」
僕は彼女の方を抱きしめていた手を、腰へと移動した。彼女の体がぴくりと跳ねたのを僕は見逃さなかった。
「いやっ、んっ…」
彼女は僕から離れようとしたが、そんなことはさせない。
「話して。あいつのこと」
「智也のこと、ですね…」
「うん。気に入らない」
「気に入らない?」
彼女は、僕と向かい合った。
「うん。どうしてあいつは呼び捨てなのに…」
「それは…高校からの同級生だし」
「嘘だ。それだけじゃないだろ」
「本当です…!何もありません!」
彼女は、僕の手をぎゅっと握った。
目を潤ませながら僕を見つめる彼女は、僕の弱点をわざと突いてくるのだろうか。それとも、何も知らずに核心に迫るのだろうか。僕の、彼女に見つめられると勝てないという弱点を、彼女は知っているのだろうか。
「本当?」
「はいっ、本当です、わたし…」
僕の手をぎゅっと握りながら、今度は僕の胸に身を預けて、僕の着ているワイシャツをぎゅっと掴んだ。
嬉しい。けど、そんなに強く掴むと皺になるな?まあ、可愛い彼女のことだから、なんてことないけど。
「話して」
「はい…智也とは高校からの同級生で
、大学も一緒でした。智也とは良い友達としか思ってなくて…」
「それで?」
「卒業して、会うこともなかったんです。でも、今になって」
「再会したんだな」
「はい…それで、少し話をしてたら…また会いたいって言われて、何度か会ってたんですけど…」
「へえ?」
「…んっ、で、でも、その…」
「僕という彼氏がいるのに、智也とは何回か会ってたんだ?」
「ご、ごめんなさい…」
彼女は頭を下げた。
でも、許せないな。僕以外の男と数回でも会って楽しく話していたのかと思うと、おかしくなりそうだ。
「それで?」
「博人さん…やっぱり怒ってる…」
彼女は今にも泣きそうなほど目を潤ませていた。
「怒ってない。早く言うんだ」
僕は苛立って、彼女の肩を強く強く掴んだ。
「痛い…」
「そんな痛くないだろ?」
「いやっ、痛い!」
「……」
彼女は僕を睨んで声を上げたが、
はっとしたように俯いた。
僕は黙って彼女の肩から手を離した。
「ご、ごめんなさい、博人さん…!」
「……いいよ、僕が悪いんだし」
僕はそう言って溜息をつき、立ち上がった。
「博人さん…?」
急に立ち上がってくるりと彼女に背を向け歩き出した僕に驚いたのだろう。
彼女は僕にはくっついてこなかった。
「博人さん、あの…」
しかし、彼女は少し遅れて僕の背を追った。けれど、僕の速度は彼女の速度の2倍、いや3倍だ。簡単には追いつけない。
「待って、博人さん…どこに、行くの…」
僕は聞こえない振りをした。
「博人さん…」
「……」
僕は急に足を止めた。
それに驚いた彼女は急には止まれず、
僕の背中にぶつかった。
「…!ご、ごめんなさいっ」
「……話せよ」
「は、はい、えっと…」
「何度か会ってた。で?」
「再会、して…急に、智也が私を…」
彼女は口をつぐんだ。
「抱きしめてキスされたんだろ?」
「はい…」
僕は彼女と向き合った。
彼女は、リビングに入ってすぐに感嘆の声を漏らした。
キョロキョロとリビングを見渡して歩き回る彼女は、まるで子供だ。
「心愛ちゃん」
僕がそう呼んでも、夢中で周りを見る彼女は気づいていない。
「心愛ちゃんってば」
彼女を追いかけようと彼女の背を追いかける。彼女の行く手を阻もうと前に回り込もうとするも、彼女は僕から離れて窓へと向かって走る。
「わあ、すごくきー」
すごく綺麗、と言おうとしたのだろう。でもその途中で僕は、彼女を後ろから抱きしめた。
「ひ、博人さん…?」
振り返ろうとする彼女を少し強引に窓に押し付けた。彼女は、困り顔をしながら窓に両手をついた。
「心愛ちゃん…」
「怒ってますか…?」
彼女の声は震えていた。
「怒ってない。ただ…」
「ただ?」
「心愛ちゃんは僕だけのものだって…」
僕は彼女の方を抱きしめていた手を、腰へと移動した。彼女の体がぴくりと跳ねたのを僕は見逃さなかった。
「いやっ、んっ…」
彼女は僕から離れようとしたが、そんなことはさせない。
「話して。あいつのこと」
「智也のこと、ですね…」
「うん。気に入らない」
「気に入らない?」
彼女は、僕と向かい合った。
「うん。どうしてあいつは呼び捨てなのに…」
「それは…高校からの同級生だし」
「嘘だ。それだけじゃないだろ」
「本当です…!何もありません!」
彼女は、僕の手をぎゅっと握った。
目を潤ませながら僕を見つめる彼女は、僕の弱点をわざと突いてくるのだろうか。それとも、何も知らずに核心に迫るのだろうか。僕の、彼女に見つめられると勝てないという弱点を、彼女は知っているのだろうか。
「本当?」
「はいっ、本当です、わたし…」
僕の手をぎゅっと握りながら、今度は僕の胸に身を預けて、僕の着ているワイシャツをぎゅっと掴んだ。
嬉しい。けど、そんなに強く掴むと皺になるな?まあ、可愛い彼女のことだから、なんてことないけど。
「話して」
「はい…智也とは高校からの同級生で
、大学も一緒でした。智也とは良い友達としか思ってなくて…」
「それで?」
「卒業して、会うこともなかったんです。でも、今になって」
「再会したんだな」
「はい…それで、少し話をしてたら…また会いたいって言われて、何度か会ってたんですけど…」
「へえ?」
「…んっ、で、でも、その…」
「僕という彼氏がいるのに、智也とは何回か会ってたんだ?」
「ご、ごめんなさい…」
彼女は頭を下げた。
でも、許せないな。僕以外の男と数回でも会って楽しく話していたのかと思うと、おかしくなりそうだ。
「それで?」
「博人さん…やっぱり怒ってる…」
彼女は今にも泣きそうなほど目を潤ませていた。
「怒ってない。早く言うんだ」
僕は苛立って、彼女の肩を強く強く掴んだ。
「痛い…」
「そんな痛くないだろ?」
「いやっ、痛い!」
「……」
彼女は僕を睨んで声を上げたが、
はっとしたように俯いた。
僕は黙って彼女の肩から手を離した。
「ご、ごめんなさい、博人さん…!」
「……いいよ、僕が悪いんだし」
僕はそう言って溜息をつき、立ち上がった。
「博人さん…?」
急に立ち上がってくるりと彼女に背を向け歩き出した僕に驚いたのだろう。
彼女は僕にはくっついてこなかった。
「博人さん、あの…」
しかし、彼女は少し遅れて僕の背を追った。けれど、僕の速度は彼女の速度の2倍、いや3倍だ。簡単には追いつけない。
「待って、博人さん…どこに、行くの…」
僕は聞こえない振りをした。
「博人さん…」
「……」
僕は急に足を止めた。
それに驚いた彼女は急には止まれず、
僕の背中にぶつかった。
「…!ご、ごめんなさいっ」
「……話せよ」
「は、はい、えっと…」
「何度か会ってた。で?」
「再会、して…急に、智也が私を…」
彼女は口をつぐんだ。
「抱きしめてキスされたんだろ?」
「はい…」
僕は彼女と向き合った。