希望の夢路
「博人さん、ほら!見て」
「ん?」
彼女は、玄関の床に置いてあるバッグを指差した。
「これは?」
「荷物です」
「荷物って?」
「今日、博人さんのお家に泊まるんですもの。必要なものだけですけど、急いで準備しましたっ!」
急いで、準備した?
やはり、無理をさせてしまったのだろうか。
「無理なんてしてませんからね」
「してるだろ」
「してません!!」
彼女は僕の右手を握った。
「どうして?何故してないと言いきれる?」
「だって、楽しみにしてたんです。
私、博人さんに誘われるの」
「今度誘われたら、もっと可愛い自分になって迎えたいとか、もしお泊まりってなったとしたら色々揃えておかなきゃいけないし、すぐお泊まりできるようにしないと…それから…」
ああ、だめだ。僕の理性が壊れそうだ。やめてくれ、これ以上そんな可愛いことを言うようなら、僕はー
「でも、お泊まりってなんだか、ドキドキしてーん、んうっ…」
彼女に顔を近づけていたのに、彼女は気付かずに語っているから、少し意地悪をしたくなった。
彼女の唇を、優しく塞ぐ。
いや、塞ぐというより貪ると言った方が正しいかもしれない。
「ん、んうっ…ん、…!」
彼女は驚いてぴくんと身体が跳ねた。
しかし僕はそんなことは気にせず、
彼女の頬を撫でながら口付けを続行する。

「んうっ、や、っ、」
彼女は、僕から逃れようとするも僕から逃げられないということはわかっている、はず。でも、身体は敏感に反応するらしく、
「んっ、」
僕が優しく彼女の唇を奪うと、彼女はだんだんと落ち着いていく。
目を潤ませて僕を見つめるその瞳に、キスをする僕が映っている。
僕が少し唇を離した隙に、彼女が僕の首に腕を回した。

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