希望の夢路
もしかして、何も食べてないのか?
まさか、そんなことはないはずー
「心愛、悪いけど…俺の家に運ぶぞ」
俺は心愛をいわゆる、お姫様抱っこして家路へと向かった。
全く意識のない心愛。
前会った時より、かなり痩せた気がする。特に、顔が痩せてきたような気がするな。ただでさえ痩せてるから、見てるこっちが心配になる。
心愛は、軽かった。すごく軽かった。
こんな軽くて大丈夫なのか?

「よいしょ、っと」
俺は無事に家に辿り着き、寝室のベッドに心愛を優しく寝かせた。
「このまま、奪ってしまいたいな」
俺はぽつりと呟いた。
このまま、寝ている心愛をどうにかしたい。滅茶苦茶にしたい。
そんな淫らな考えが浮かんでは消え浮かんでは消え、欲望を振り切るように俺は頭を振った。
「でも…無理だな」
そりゃあ、俺は心愛と一つになりたい。身体を重ねたい。でもそれをしてしまったら、心愛は完全に壊れてしまう。俺に奪われたとわかった途端、何をするかわからない。
心愛はきっと、あいつに奪われたいと思うんだろうな。
あいつは優しいからー心愛の反応を見て優しく攻めるんだろうな。
ーああ!あいつに攻められる心愛の姿なんて想像したくない。
きっと、あいつは優しく優しく心愛を……愛するんだろうな。
ーだめだ、やめよう。こんなことを想像しなきゃいいんだ。考えるな。
「う、うう、う…」
ベッドにいる心愛が、呻き声を上げた。
「心愛?心愛大丈夫か?」
「う…」
心愛の傍に近寄りよく見ると、心愛の目から涙が零れていた。
「心愛?」
「…う、ひ、ろとさん…」
「……あいつ、か」
あいつの名前しか、出てこない。
心愛の口から必ずと言っていいほど出てくるのは、あいつの名前だ。
羨ましい。そんなに心愛に愛されるあいつが、妬ましい。

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